注文住宅を建てる際に、まだ土地を持っていなくて土地探しからスタートする方も多いと思います。この記事では土地探しにあたって、どんなポイントに注意して進めていけばいいのかをお話します。
どんな暮らしをしたいのかを土地探し前にイメージしておく
どんな土地を「いい土地」と考えるかは、それぞれの価値観によって全く違ってきます。駅の近くの利便性が高い場所をいいと思う人もいれば、人込みから離れて自然の多い環境で静かに暮らせる土地がいいと思う人もいると思います。
まずは新しい家でどんな暮らしをしたいのかをイメージをして、家族で共有しておくと土地探しがスムーズです。具体的に土地を探し始める前に、住まいにおいて何を大切だと考えるのか、その優先順位をつけておきましょう。
- 敷地の状況
広さ、形状、高低差、日当たり、前面道路の広さなど - 周辺環境
学校、病院、公園、スーパーなどからの距離、近隣の雰囲気など - 安全性
災害発生の可能性、治安、地盤の強さ
土地にはどんな制限がかかっているの?
土地には様々な規制がかかっているので、好きなように建物を建てることができません。みんなが快適に暮らせるように、建物の用途や面積、高さ、防火の規制など様々な制限が掛かっています。
購入後に考えていた家が建てられない、といったことがないように、土地にかかる制限にはどのようなものがあるのかをあらかじめ知っておきましょう。
用途地域
土地の利用方法を定めた「都市計画法」という法律があり、これが適用される都市計画区域は「市街化区域」「市街化調整区域」「無指定区域」にわかれています。
「市街化区域」は市街化を推進している区域なので、建物の建築が可能ですが、「市街化調整区域」は市街化を抑制している区域なので、特別な場合以外には建物の建築ができません。(建築できる場合もありますので、どうしても市街化調整区域の土地に理由がある場合は、専門家に相談してください)
更に「市街化地域」は、13種類の「用途地域」に分けられています。用途地域ごとに、用途や高さ、大きさが定められているので、建てることができる建物が変わってきます。
建ぺい率、容積率
建物の面積についての制限もあります。
建ぺい率は、敷地面積に対する建築面積の割合のこと。建築面積とは建物を真上から見た時の建物の壁や柱の中心線で囲まれた内側の面積です。例えば敷地が100㎡の場合、建ぺい率が40%に定められている土地には、建築面積40㎡までの建物を建てられます。敷地が角地の場合には、建ぺい率が10%割増しになることがあります(角地緩和)。
容積率は敷地面積に対する延床面積の割合のこと。延床面積とは各階の床面積(2階建てなら1階と2階の床面積)を合計した面積です。例えば敷地が100㎡の場合、容積率が80%に定められている土地には、延床面積80㎡までの建物を建てられます。
高さ制限
用途地域ごとに、建物の高さに関する制限があります。
用途地域が「第一種低層住居専用地域」と「第二種低層住居専用地域」の土地には、「絶対高さ制限」が定められていて、建物の高さが10mか12mのどちらかまでに制限されています。
その他に高さの制限には「道路斜線制限」「北側斜線制限」「隣地斜線制限」という3つの「斜線制限」があり、その決められた斜線内に収まるように建物を作る必要があります。
防火規制
都市計画法では市街地において火災の危険を防ぐために、駅前や建物の密集している地域や幹線道路沿いなどの地域に「防火地域」や「準防火地域」の指定をしています。
建物の密集地では火災が燃え広がるのを防ぐために、幹線道路沿いでは火災の際に消防やなどの緊急車両の妨げにならないようにするために定められています。
その他に建築基準法で定められた「法22条区域」や、東京都では「新たな防火規制区域」に指定されている地域もあります。
上記の地域内で建物を建築する場合には、防火対策が義務づけられています。例えば屋根や外壁の素材や作り方、窓の防火性能についての基準がありますのでそれをクリアした建物にする必要があります。
その分防火規制のエリア外に建てる建物よりも費用がアップしますし、使いたい素材やデザイン的にやりたいと思っていたことが実現できない場合もありますので、土地の購入前に確認しておく必要があります。
日影規制
高い建物を建てることによって周囲への日当たりが悪くならないように、建物によってできる日影の範囲や時間が規制されています。
規制を受ける建物は用途地域によって定められていて、「第一種低層住居専用地域」と「第二種低層住居専用地域」では、軒の高さ7mを超える建物、または地階を除く階数が3階建ての建物」、それ以外の地域については「建築物の高さ10mを超える建物」となります。
2階建ての場合には一般的な建て方であればこの基準以内の高さに収まっていることがほとんどだと思いますので、3階建てを建てる際に気にする規制だと考えておくといいでしょう。
セットバック
建物を建てるためには、建築基準法で認められた幅4m(地域によっては6m)以上の道路に2m以上接していなければなりません。災害時の避難のためや、消防車が通れる道幅を確保するためにこのきまりが定められています。
とはいえ、この決まりができる前からの住宅地などでは、4m未満の道路もまだまだ多いのが実際のところです。そこで幅が4m未満でも道路として扱う「みなし道路」として自治体が指定している道路があります。
このみなし道路に接している場合、建物を建て替える際には、道路の中心線から2mまで後退(セットバック)した位置が道路の境界線になります。その後退した部分の面積は建ぺい率や容積率の算定には含まれませんので、セットバック後の敷地面積で自分の建てたい面積の家を建てることが可能かどうか、チェックしておきましょう。
協定、地区計画
土地によっては、その地域での協定や地区計画が定められていることがあります。
例えば建物の高さや境界線からの距離が、用途地域での定めよりも厳しく指定されていたり、屋根や壁などの外装材の色の制限がある場合もありますので、きちんとチェックしておきましょう。
内容によっては、確認申請という一般的に建物を建てる際に必要な手続きの前に、この協定や地区計画の申請や許可をとる時間が掛かる場合もありますので、注意が必要です。
ハザードマップを見て土地のリスクを知る
ハザードマップとは、その地域の自然災害の被害について予測して示した地図のことです。洪水、津波、地震、土砂災害などについての被害予想を見ることができますので、購入を検討している土地のリスクを知ることができます。
ハザードマップは、国土交通省が提供しているハザードマップポータルサイトで見ることができます。
もしくは、各自治体のホームページにも掲載されています。「ハザードマップ+市町村名」で検索すると出てきます。自治体によっては紙の地図を配布しているところもありますので、詳しくは問い合わせてみてください。
どの程度の被害が起きる可能性があるのか想定できるので、土地の購入を検討している際にはぜひ見ておきましょう。
こんな土地は思った以上に費用がかかる
家づくりにかけることができる全体予算の中で、希望するような家を建てる場合にはどのくらい土地に費用をかけることができるのか、あらかじめ検討しておくことが大事です。土地の購入に費用をかけすぎてしまって、希望する家を建てるには予算が足りない・・・ということがよくあるのです。
土地の状況によっては、一般的な土地よりも購入後の工事費用が多く掛かる場合があります。
どのような状況だと追加の費用がかかることになるのか、具体的に見ていきましょう。
解体が必要な既存建物がある場合
建物の大きさや状況にもよりますが、一般的な場合には150万円から200万円程度、もしくはそれ以上の解体費用が掛かります。
土地の前の道路が狭く、大きな車や重機が入ることができない場合や、敷地と道路の高低差がある場合には、更に費用が割り増しになります。
水道の引き込みがない場合、水道の引き込み管が細い場合
敷地に水道が引き込まれていない場合には、新規で水道を引き込む費用が50万円から100万円程度、もしくはそれ以上の費用が掛かります。道路と敷地の高低差や、道路のどの位置に水道の本管が通っているのか(水道管から敷地までの距離)などによって金額がかわってきます。
以前に古い家が建っていた場合、水道は引き込まれていても水道管が13ミリと細いことがあります。その場合には20ミリの水道管に引き直す必要があります。水道メーターのフタをあけて中を見ると何ミリの水道管かがわかりますので、現地に行った際に確認するか、不動産屋さんに確認してください。
地盤が弱い場合
地盤が弱かった場合には、地盤改良費用が60万円から100万円程度、もしくはそれ以上かかります。建てる建物の大きさや地盤改良の方法、地盤の弱さによってかなり金額に幅があります。
購入前に地盤の強さがわかればいいのですが、一般的には購入前に調査できることは少ないので、実際に土地を購入した後に地盤調査を行います。
ちょうどその敷地の近隣で新築工事の現場がある場合や、家を建てた方に地盤の状況を聞ける場合は、それも参考になります。ただ近隣でも地盤の強さが異なる場合もあるので、あくまでも参考です。
といってもなかなかそんな都合のいいことばかりでもないですよね。そんな場合は下記の地調査会社のホームページで、これまでにその会社で調査した際のデータ(地盤が良好か軟弱か、改良を行っているかなど)を見ることができます。
上記のリンク先のページの中の「地形でみる軟弱地盤マップ」をクリックします。
おおまかなデーターではありますが、周囲の土地にどんな結果が出ているのかをみることで、全くデーターがない場合よりは予想できることが増えてきます。参考にする場合は、隣の敷地でも地盤の強さが違う場合もありますので、あくまでも目安にするだけ、ということに注意してください。
役所によっては近隣の地盤データーを見ることができる場合がありますし、近隣に住む方の話や昔の航空写真などを見ることで、その土地の地歴がわかることがあります。例えば現在は宅地になっていても、昔は川や池、水田であった場合は、軟弱な地盤です。地名が土地の成り立ちを表している場合もあります。
道路や隣地との高低差がある場合
現在ある擁壁の安全性が確認できず、新たに擁壁をつくらなくてはいけない場合には、状況により差がありますが、高低差が大きな場合にはかなり多額の費用がかかります。
また安全性が確認できて擁壁の新設の必要がない場合でも、敷地と道路に高低差がある場合は、材料の搬入や工事の際に通常よりも手間がかかるため、工事費用が高くなります。
前面道路が狭い場合
敷地前の通路や敷地延長部分の幅が2.5m以下の狭い道路の場合には、工事車両の進入が困難になるため工事費用が割り増しになる場合があります。その敷地の前はすでに広い道路になっている場合でも、そこに入ってくる途中に狭くなっている場所(まだ道路後退をしていない家があるなど)がある場合にも、工事車両が入ることができないので同様です。
以上のような土地の場合、一般的な土地よりも追加で費用がかかってきますので、土地探しの段階でそれも含めた予算の検討を行うことが大切です。上記のような土地によって追加で掛かる費用や、その他の諸費用や建物の工事費などを含めた家づくり全体の予算シミュレーションをしながら、土地の購入を検討しましょう。
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