河口湖の家
目の前に富士山を望む平屋
以前当事務所で設計した「森の診療所」をご覧いただいたことをきっかけに、いろは設計室を知っていただきました。
診療所と同様に、目に見える部分の素材だけではなく、断熱材や下地など見えなくなるところの素材や家の作り方にもこだわって、安心して暮らせる住み心地のいい家をつくりたいと、いうお話をしながら打合せが始まりました。
すでにご購入いただいていたのは約150坪と十分な広さがあり、目の前には大きな富士山がドーンと見える、景色のいいゆとりのある土地。富士山が見える南側だけではなく、北側にも遠くには空と山並みが見える気持ちのいい場所です。
家のどの場所からも庭や外の景色を楽しめることや、生活のしやすやなどを考えて平屋となりました。
リビング・ダイニング
敷地のいちばんよく景色が見える場所にリビング・ダイニングがあります。家が完成したばかりの現在はまだ庭の植栽がされていませんが、もう少し暖かくなった頃に計画されるご予定です。
敷地に余裕があるため、それをいかして建物の位置を少し中央側に寄せ、北側にも庭のスペースをつくっています。リビング・ダイニングからはこの南北両方の庭を楽しむことができ、気持ちのいい風が抜けていきます。北側の庭は道路側からの目隠しにもなり、またキッチンからも見えるように配置を計画しました。
リビングや寝室、廊下など(多目的室以外)の床は南部赤松のフローリング。節がないのですっきとした印象です。塗装は木の呼吸を妨げないように自然塗料(オイル)を塗っています。
壁は左官仕上げ(中霧島壁)、天井は和紙壁紙貼りといった湿度の調整をしてくれる素材を使用。家具や建具にも合板は使用せずに、無垢の杉材で製作しています。構造材には国産の杉や桧、その他外部のデッキや軒裏などには桧を使用しています。
パッシブ冷暖(床下エアコン)
この地域は標高が高く、国が定めている断熱地域区分では3地域という寒い地域になります。
(北海道が1地域、関東や関西などの多くの地域が5か6地域、沖縄が8地域です。)
そのため、この家では断熱性と気密性を高めるとともに、空調には「パッシブ冷暖」を入れて、家中どこにいてもあたたかく過ごすことができるように計画しました。
「パッシブ冷暖」はエアコンによる温風を床下の分配ボックスとダクトによって振り分けて、床下空間全体に広げます。その暖気で床全体があたためられ、やがて室内もゆっくりとあたためていきます。
この家では、リビングにあるエアコン1台だけで家全体をあたためます。
一般的な床暖房の場合はLDKのみに入れる場合が多いので、洗面所やトイレ、個室や玄関などについては寒いままとなってしまいます。ところがこの「パッシブ冷暖」では床下全体がつながっているので家全体に暖気が行きわたり、トイレに行くと寒い!などということがなくなりますので、ヒートショック(急激な温度差が影響し、血圧が大きく変化することが原因で起きる健康障害のこと)がなくなります。
夏はエアコンからの冷気をダクトを通してファンで引き上げて、各部屋の高い位置に取り付けてある吹き出し口から出すことで涼しくします。
(この地域では夏は比較的涼しく、これまでもほぼ冷房は使わずに過ごしていたそうなので、新しい家でも冷房はあまり使わないかもしれません。)
多目的室
家の中央の位置には主にヨガを行うための多目的室があります。
道具を使うことも多いそうなので、床は他の部屋よりも少し堅さのあるナラフローリングです。
寝室
寝室は家全体の中の東南の位置にあるのですが、その先には障子で仕切ることができる洗濯物干しスペースがあります。
室内で洗濯物を干すこともあるため、専用のスペースがほしいということで、この場所を計画しました。
写真
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建築地:山梨県南都留郡富士河口湖町
構造規模:木造(在来)平屋建
敷地面積:495.99㎡(150.04坪)
延床面積:107.50㎡(32.52坪)
用途:専用住宅
世帯:夫婦
完成:2020年12月
写真撮影:小泉一斉
(※印の写真は、いろは設計室撮影)