図面は手紙

設計の仕事をはじめたばかりの頃は、同じ図面をかいてもつくる人によって出来上がるものが大きく違うということが、あまりよくわかっていませんでした。もう10年以上前のことですね。

それぞれの職人さんの技術的なレベルの違いということも、もちろん仕上がりを左右しますが、それより、私がやっているような住宅の設計では、そんなに特殊な技能が必要とされる納まりなどがあるわけではないので、ちょっとした気持ちの遣い方による仕上がりの違いの方が、大きいのではないかと感じています。

図面にかかれている寸法や材料を、ただそのままつくるという職人さんもいれば、何をやりたくて、こういう納まりにしているのかを、深く考えて、図面を読み取ろうとしてくださる職人さんもいます。そういう気持ちにさせるのも、設計者の力量なのかもしれませんし、それとは関係ない場合もあるかもしれません。

図面はつくってくださる人への手紙のようなものだと思っているので、できるだけ図面を多くかくようにしているのですが、それで伝えられることは限られているので、現場で直接説明をしたり、提案をもらったり。

そういったことにひとつひとつ丁寧に対応してくださり、それに職人さんの技術や経験が加わって、こちらの想像以上のものが出来上がることを何度も経験してきました。それは、それとは逆の経験をしていた時期もあるので、はっきりと実感することができるのです。

現在工事中の現場も、ありがたいことに大工さんをはじめとする職人さんと、そんないいやりとりをしながら進んでいます。

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